| 「水着コメント」考(その2)--“モノキニ”と呼ばれた水着-- |
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| kononatu@mail.goo.ne.jp (1999.04.29 脱稿) (1999.05.26 改訂) (1999.11.29 増補) (1999.12.10 画像追加) (2000.05.29 リンク更新) (2000.11.02 メールアドレス変更) (2002.08.24 画像リンク変更) |
「この夏・水着の傾向と対策」では、水着を大きく4つに分類している。すなわち、ワンピース、モノキニ(以上、ワンピース水着)、セパレーツ、ビキニ(以上、ツーピース水着)である。こういった分類を他では見たことがなく、特に《モノキニ》は、他の3つに比べると知名度が低く、歴史も浅いせいか辞書類にもほとんど掲載されていない。
そこで、《モノキニ》と呼ばれた水着が時代によりどのように変化してきたのか、また逆に、《モノキニ》と呼ぶべき水着が当時は何と呼ばれていたのかを示しながら、水着へのコメント付けの難しさを紹介するのが本稿の主な目的である。なお、引用した文献の詳細については、[参考文献]を参照のこと。
『(新版)フェアチャイルド ファッション辞典』「SWIMSUITS」項に、こうある。
| mono-kini【モノキニ】女性用のトップレスの水着で,パスティーズ pasties(乳首当て)と小さなビキニ・パンティー bikini panties だけからなる.1970年にデザイナーのルディ・ガーンライヒ Rudi Gernreich によって紹介された. |
しかしこれは、厳密には正しくない。なぜなら、1960年代にも実は《モノキニ》が存在していたからである。木村春生氏が1984年に著した『水着の文化史』「第五章 水着のTPO時代へ/1 華やかさを増す」には、1968年頃の出来事として、こう記されている。
| モノキニスタイルは(ボーダーラインとも呼ぶ)は現代でこそ比較的多く見られるスタイルであるが、当時は正統派のスタイルの圏外にあってエクセントリックな水着に属し、そう多くはなかった。モノキニの「モノ」は語源的にビキニの「ビ」(二つ)に対して「単」(一つ)を意味し、パンツだけのトップレスのことであるが、今日では一般的にセパレーツ風のスタイル(背後からはワンピースにみえる)ものを中央でリング、バックル・チェーンなどで、上下つないだものを意味するようになっている。いわば、ツーピースのバリエーションともいうべきもの。(p.50/誤記も原文のママ) |
世界的に著名であった水着デザイナー、ルディ・ガーンライヒ氏(ルディ・ガーンリック/ルディ・ガーンライク)が、トップレス水着を発表したのは1964年のことであった。すなわち、《モノキニ》とは、本来は1960年代に発表されたトップレス水着に与えられた呼び名だったが、そのスタイルが定着しなかったために、その後に登場したまったく別のスタイルの水着の呼称として定着してしまったものと考えてよいだろう。
こういった誤伝が、日本および欧米で同時に起こったことなのかは不明だが、1970年代を通して《モノキニ》は、ある種の奇抜な水着の呼び名にしか過ぎなかったようである。
なお、その当時にもフロントスタイルがワンピース水着でバックスタイルがツーピース水着に見える水着も存在していたが、それらはおおむね“サイドからバックにかけて大きくカットしたワンピース”でしかなく、《モノキニ》と呼ばれることはなかったようである。
ところが、ハイレグ・ワンピースが定着する1980年代半ば頃から様相は一変する。それが、「この夏・水着の傾向と対策」の水着コメントでも多用している“ベアトップ・ハイレグ・モノキニ”(バックスタイルがビキニでフロントスタイルがベアトップ・ハイレグ・ワンピースに見える水着)の流行である。(左図:フロントスタイル/右図:サイドスタイル) ただし、この時期でも《モノキニ》という呼び方はほとんど使われておらず、“ビキニ・ワンピース型水着”という表現が稀に用いられる程度であった。
1992年に入ると、“ビキニ・ワンピース型水着”に対して、当時はほぼ死語になっていた《モノキニ》を用いる女性誌の水着特集記事も見られるようになり、一般にも浸透し始める。しかし、近年のビキニ人気により、バブル期を代表する水着の一つだった《モノキニ》も、あまり着られなくなっており、再度死語化するのも時間の問題かもしれない。
こういった経緯、あるいは本来トップレス水着を意味していたからなのか、現在でも《モノキニ》という呼び方を用いない女性誌もあり、この呼称が定着したとは言い難い状況にある。
最後に一言付け加えると、現在《モノキニ》と呼ばれているものは、木村春生氏が述べられているような水着に限定されず、“見る角度により、ワンピース水着にもツーピース水着にも見えるものの総称”と考えてよいだろう。
ちなみに、「この夏・水着の傾向と対策」では、トップ部とボトム部が繋がっている水着を総称してワンピース水着と呼んでいる関係で、下図のような水着も《モノキニ》に分類されワンピース水着として扱われている。しかし、各社のオンライン水着カタログなどを見ると、肌の露出の度合が多い水着は、どのようなスタイルのものでも《ビキニ》として扱われる傾向があるので注意を要する。
【1999年11月29日 増補】
その後の調査により新たに判明したことがいくつかあるので、追記する。
まず、 Tribe.net Columns - Past Out - April 5, 1999 (http://www.tribe.net/columns/pastout/po990405.html) (2000.05.29 削除を確認)によると、ルディ・ガーンライヒ氏(Rudi Gernreich; 1922年ウィーン生、1985年没)がデザインしたトップレス水着(topless bathing suit; topless swimsuit)の写真が最初に掲載されたのは、1964年6月の『Look』誌であったようである。
Retroactive Profile - Rudi Gernreich (http://www.designervintage.com/rudi.html) や fashion design (http://www.fidm.com/Resources/Exhibit/ExhibitArchives/FI_TC_jun97.html) で紹介されている写真を見ると、それは、ローカット&フルバック・ボトムのレトロなワンピースをベースとし、トップ部をヘソ上で切り取った代わりに長いストラップを付けたようなデザインで、「この夏・水着の傾向と対策」ではワンピース水着に分類されるようなものであったようだ。
なお、『A SUPPLEMENT TO THE OXFORD ENGLISH DICTIONARY』の「monokini」項によると、この時点ですでに“monokini”と呼ばれていたことがわかった。また、それと同時に、少なくとも1974年まで、《モノキニ》はトップレス水着の同義語としても用いられていたことがわかった。→[原文](発音記号は省いた)
【1999年12月10日 画像追加】
インターネットで流布されている水着画像の中から、ルディ・ガーンライヒ氏のデザインと良く似た“元祖型”《モノキニ》(左)と木村春生氏が『水着の文化史』で紹介している“実用型”《モノキニ》(右)を参考のため掲載しておく。
なお、「この夏・水着の傾向と対策」の仕様では、“元祖型”はワンピースに分類される水着だが、ルディ・ガーンライヒ氏に敬意を表して、例外的に《モノキニ》に分類している。
また、“実用型”は、木村春生氏が「中央でリング、バックル・チェーンなどで、上下つないだもの」で「いわば、ツーピースのバリエーションともいうべきもの」と表現されているように、ヘソ上の位置でトップ部とボトム部を繋いだ水着であった。しかし、「この夏・水着の傾向と対策」では、右のような一体化したものも《モノキニ》と呼んでいる。
※【1999年11月29日 増補】の削除部分( 部分)について一言補足すると、現在でも、ツーピース水着のトップを外して着用したものを《モノキニ》と呼ぶこともあることが判明した。ただし、「この夏・水着の傾向と対策」では、そのような場合、「トップなし」と呼び、《モノキニ》に分類することはない。